top of page

「オルフェウス」

 

ギリシャ神話の「オルフェウス」を絵本にしてみました。

 

1

オルフェウスは音楽の神アポロンと

カリオペの間に生まれました。

父からもらった竪琴の技はすばらしく、

彼が弾くと人間ばかりか、森の動物たちもみなその音に聴きほれ感動し、

凶暴な野獣は猫のようにおとなしくなり

嵐や津波もしずまり、森の木々はその枝を彼にさしのべ岩もやわらかくなったそうです。

 

 

 

2

オルフェウスはイアソン率いる

アルゴ船探検隊に参加し、

彼の歌と竪琴の演奏で荒波や嵐を

鎮めました。

半身女性で半身鳥の魔物セイレーンは

美しい歌で船乗りを狂わし

岩に船を衝突させていました。

オルフェウスは船員に耳栓をさせ、

自分の身体はマストに縛り付け

セイレーンの魔力を自分の歌で

打ち破りました。

 

 

 

3

オルフェウスは

木の精霊エウリディケと結婚し、

仲良く幸せに暮らしていました。

ある日エウリディケが

河畔を散歩していた時

羊飼いのアリタイオスが彼女の美しさに

魅かれ、追いかけてきました。

驚いて逃げるエウリディケは

草むらにいた毒ヘビを踏んづけてしまい

足をかまれて死んでしまいました。

 

 

 

 

 

 

4

オルフェウスは大変悲しみましたが、

エウリディケをあきらめる事が

できません。

彼は地下の死の国に行ってエウリディケ

を取り戻そうと決心をしました。

オルフェウスはタイナロスの岬のそばにある穴から、暗くて険しい地下道を通って、深い深い闇の底へと降りていったのです。

 

 

 

 

 

 

 

5

オルフェウスは長い闇の道を何日も何日も歩いてゆきました。何日過ぎたのかも分からなくなった頃、暗闇の中の広い所に出ました。

そこは死の国の入口で、闇よりももっと

黒い三途の川が流れていました。地獄の渡し船のところにいたぼろぼろの服で長いあごヒゲがある老人カロンに、オルフェウスは自分を向こう岸に渡して欲しいとたのみました。

カロンは「生きている者を渡す事はできない」と断りましたが、オルフェウスが竪琴を

弾き歌うその悲しみの音色を聞いたカロンは黙って向こう岸まで渡してくれました。

 

 

6

オルフェウスはようやく死者の国の門の前までたどりつきました。

大きくそびえ立つ門の前には番犬ケルベロスが待ち構えていて恐ろしい吠え声をオルフェウスにあびせました。

ケルベロスには頭が3つあり、

足が速く怪力でした。

3つの頭のために死角はなく、死者が門から抜け出すことは非常に困難で、生きている者が入ることも許しませんでした。

しかしオルフェウスが竪琴を弾き歌を歌うと、吠えるのをやめ、しっぽを垂れて寝てしまいました。

 

 

7

オルフェウスはついに、死者の国の王ハデスのもとにたどりつきました。

ハデスの前で竪琴を弾きながら歌い、亡くなったエウリディケを生き返らせて欲しいと懇願しました。死者の国の亡者すべてがすすり泣く中で、ハデスはあくまでも死者の国の掟を守り頭を横にふりましたが、横にいるハデスの妻のペルセポネは、オフフェウスを哀れに思い、涙を流して王ハデスにエウリディケを生き返らせて欲しいと願いました。ハデスはそれを聞き入れ、亡者の中からエウリディケを呼び出すとオルフェウスに連れて戻る事を許しました。

 

 

8

王ハデスはオルフェウスに一つの条件を出しました。「いいか、オルフェウス。地上に出て太陽の光を浴びるまでは決してエウリディケを振り返ってはいけないぞ」オルフェウスは大変喜びました。死者の国を出て、三途の川を渡り、長い長い地上への道を歩きました。やがて、地上からの潮風がオルフェウスの頬をなで、かすかな太陽の光が見えてきました。地上へと急ぐオルフェウス。あと少しで地上というところで、エウリディケが本当にうしろについてきているのか不安になったオルフェウスは思わず後を振り向いてしまいました。その瞬間、深い闇がエウリディケを包み、とっさに出したオルフェウスの手は空をつかんだだけで、エウリディケは消えていってしまいました。

 

9

気も狂わんばかりに死者の国に引き返すオルフェウス。しかし三途の川のカロンは二度とオルフェウスを船に乗せてはくれませんでした。

失意のオルフェウスは7日7晩、眠ることも食べることも忘れ竪琴をひき、歌を歌い続けながら野山をさまよい歩き、

やがて気がふれてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

10

その後オルフェウスは女性を遠ざけるようになりました。

ある時、オルフェウスが竪琴を弾いていると、酒の神ディオニソスの祭りで酒を飲んでいたトラキアの女性たちがオルフェウスの気をひこうとしましたが

まったく自分たちの美しさに興味をひかない事に怒り、オルフェウスの手足を引き裂いて殺し、その頭と竪琴をヘブロスの川に投げ捨ててしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

11

オルフェオスの頭と竪琴は美しく悲しい音を奏でながら川を下っていきました。

弱々しく歌い続けるオルフェウスの頭と竪琴はやがて海に出て

レスボス島に流れ着き、

記憶の女神達はバラバラになった身体を集めこの地の葬りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12

大神ゼウスはオルフェウスの竪琴を空にあげ、夏の星座、琴座となりました。

 

bottom of page